プロになる覚悟

昭和に生まれて平成を通過した世代の一人として
確実に言えることがある。

モノもサービスも多様化して便利になった反面、
「なんでも楽して手に入るのが当たり前」
「楽できる方法が必ずあるはずだ」

という前提で考える人が増えたということ。

ある意味、自然な流れだとは思う。

しかし、そうして手に入れたものは脆い。
びっくりするほど脆い。

「地道な努力を重ねて身に着けよう」
「カンタンに手に入るものは身に付かない」

というマインドを持つ人が少なくなったように感じる。

ウェブに関していえば、

「侍エンジニア塾」
「テックアカデミー」
「ドットインストール」
「プロゲート」

などに代表されるオンラインスクールの乱立は、
ウェブの需要の高まりを表していると同時に、

「生半可な覚悟で取り組むから挫折する人が多い」

という証拠だと思う。だからスクールが流行る。

プログラミングはノウハウだけ手に入れたら
誰でもできるようなものではない。

体系的な知識が身に付くまで腰を据えて取り組まないと、
自分の中に引き出しはできない。

引き出しがないと応用ができないから、
実践力が伴わず、
仕事をこなせるようになってからも
正しい知識が欠如したままになってしまう。

それでも収入にはなるものだから、
それで安心してしまって、
学びの心を忘れてしまう。

「これでいいんだ」

って思ってしまう。

そこでスキルアップの限界が訪れる。

「石の上にも三年」という言葉がある。

何事にも忍耐が大切だということわざだ。

お客様からお金をもらって仕事をしたいなら、
少なくともその程度の覚悟は必要。

そうでないと、
お客様に失礼だとさえ私は思っている。

上述の「なんとかスクール」の宣伝みたいに、

「たった2ヶ月でプロ級の~~~ができるようになる」

なんて甘ったれた希望にすがるようでは
時間の無駄になるからやめたほうがよい。

プロとして未知の分野に進んで
仕事をしたいと思うのであれば。

私は、まったく未知の分野だったプログラミングを
身に着けてIT業界に入るために、
大学院を中退して4年制の専門学校に進んだ。

大学ではITとは関係のない分野を専攻していたし、
年齢的にも24を過ぎていたので、
就職活動が周りより数年送れてしまうことを
覚悟の上で選択した。

そこで1年飛び級して3年間ガッツリと
プログラミングに取り組む時間を得た。

何冊も分厚い入門書を買い、
サンプルコードを1からメモ帳で打ち込み、
学校よりも自宅での時間をプログラミングに費やしてきた。

もちろんプログラミングだけでなく、
情報処理の国家資格に必要な
コンピューターサイエンスも学んだ。

アルゴリズムとか、
二進数とか、
ネットワークとか。

そのおかげで、
システム開発会社に即戦力として中途入社できた。

そんな私からみれば、

答えありきでコードの書き方と実行結果を
たった数分~数十分で解説した動画を見るだけで
本当に身に付く人がいるなら、天才だ。

人間、誰だって回り道は避けたいものだ。

欲しいものはすぐに手に入れたいし、
すぐに収入につながるスキルが欲しい。

その姿勢が遠回りだということを
多くの初学者は知らないし、
理解できない。

本当に長く役立つスキルというのは、
他人が与えてくれるものではないし、
ましてや無料で得られるものでもない。

金銭では測りがたい、
自分の時間と努力でしか得られないものだ。

プロが簡単に仕事をやっているように見えるのは錯覚。
並大抵の努力では追いつけないほどの失敗を
経験してきたからこそ成せるのだ。

そういうプロになりたいと本気で思う初学者は、
睡眠時間を削ってでも毎日深夜まで
自分で手を動かしてプログラミングをするべき。

フリーターならアルバイトが終わったあと、
勤め人ならば本業を終えて帰宅してから、
時間を作ること。

「時間がない」

は言い訳で、

「努力したくない」

と言っているのと同じ。

それくらいの覚悟がないと、
中途半端なスキルしか身に付かない。

そういう意味では、
努力しなくてもいろんな情報が手に入る時代に
生まれた世代は不憫だと思う。

答えだけが載っているネットの情報や、
何でも楽にできるという広告のフレーズに
囲まれているせいで、

「努力」の重みを、

とっても軽く認識してしまいやすいから。

私が5年前から行っているオンラインレッスンで
知り合った受講者の中で、

全くの素人や異業種からプロとしてウェブ業界に入る
覚悟を見せてもらった人は数えるほどしかいない。